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「あれ以来、もうすっかり落ち込んじゃって」 というように、「あれ」「それ」「あのこと」などと、代名詞に置き換えて話すのは、たいていはあまりよくない事柄であることが多いです。 「あれ以来、すっかり元気になって」 などとは、あまりいわないものです。
そこには、その事柄にもうあまり触れたくない、思い出したくない、という心理が働いています。もちろん、人の死や災害など、よくないことはあからさまに表現すべきでない、という社会的配慮がある場合があるのでしょう。 たとえば、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、「3.11」と表されることが多いです。「東日本大震災」という生々しい言葉が悲惨な災害を呼び起こすことを避け、「3.11」という数字に象徴させて代用しているともいえます。 これなども「あれ」「それ」などの代名詞と同じ働きをしているといえます。
過去のよくない事柄を代名詞で話す、というのも同様で、たとえば身内の死などを直接言葉にすると、直接的には知らない他人に生々しい印象を与えてしまうので、あえて避ける、という心理もあります。 しかし、純粋に「避けたい」という心理が、代名詞を使わせている場合もあります。 たとえば、特定の人を指すのに「あの人」などと、いつも代名詞を使う、というような場合には、内心、その人のことを避けているケースが多いものです。 たとえば、「部長に報告しておこう」といえばいいところを、「あの人に報告しておこう」「上に報告しておこう」などという言い方をする人は、内心、部長に対して苦手意識を抱いているはずです。 なんとなく心理的に避けている、そんなときに「あの人」「あの男」などと、距離を置いて代名詞に逃げたりするものです。 というわけで、他人の言動を注意していると、代名詞の使い方で、誰が誰を苦手にしているかがわかってしまいます。たかが代名詞、されど代名詞であります。 |
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