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ビジネスシーンで相手の本心を見抜く方法(13個)


人は、人類こそ進化の頂点にあり、「言語」という唯一の高度なコミュニケーション・ツールを獲得していると自負しているのかもしれません。

ですが、その実態は、混沌とした本能ともいえる感情の上に言語というコミュニケーション・ツールをかぶせているに過ぎず、実は無意識のうちにやりとりされているノンバーバル・コミュニケーションこそが人の本心を伝えているものです。

つまり、コミュニケーション能力を高め、相手の本心を正確にとらえることができれば、ビジネスシーンで圧倒的な優位に立てるということを意味しています。

★ここでは、ビジネスシーンを具体的に追いながら、そこで見せる表情やしぐさが何を意味し、本心がどこにあるかを探っていきましょう。



目   次
【ビジネスシーンで相手の本心を見抜く方法】
 1:上司への報告中に唇を噛む
 2:同僚との会話中に唇をなめる
 3:先輩社員に怒られて頭をかく
 4:商談中に相手が眉をこするしぐさをする
 5:交渉の終盤で鼻つまむ
 6:トラブル後の話し合いで腕を組む
 7:仕事のやり直しを命じられて、口角を下げるる
 8:休日出勤を打診されて、視線を動かす
 9:「うまくいっているか?」と聞かれて、唇を左右に広げる
 10:「理由」を聞かれて、上唇と下唇を巻き込む
 11:新商品の売込み中に、足先を出口に向ける
 12:クレーム対応で、カバンを机の上に置く
 13:謝罪の場面で、貧乏ゆすりをする


1:上司への報告中に唇を噛む


【状況シーン】

ある営業マンは、長年にわたって契約していた担当の仕事を、ライバル会社に奪われてしまった。帰宅した営業マンは、大勢の同僚がいる中で上司に正直に報告しましたが、そのとき、下を向きながら
歯で唇をグッと噛んでいた

【このときの営業マンの本心・心理】
「歯で唇を噛む」というしぐさですが、これは自己タッチのひとつで、「悔しさ」、あるいは「恥ずかしさ」などといったマイナスの感情が生じたときに出るしぐさです。

担当していた仕事をライバル会社に奪われたという事実を知ったときに、まず「悔しさ」を覚えたはずです。できれば、なかったことにしたいと思ったかもしれません。それがプライベートなことなら、酒でも飲んで一晩寝れば、スッキリと忘れることもできたでしょう。

しかし、こと仕事上のこととなるとそうはいきません。組織の一員として働くことで給料を得ている身としては、たとえどんなに不快であっても、業務上のことを上司に正確に報告する義務があります。

そうすると、上司から厳しく叱責されるかもしれません。その屈辱とストレスにも耐えなければなりません。そんなストレスを避けたいと思うのは当然でしょう。それでも上司に報告せざるを得ないのは、そうしなければならないという社会の「オキテ」が存在しているからです。

私たち人間は、社会を構成して生きるようになって以来、そんな生活を続けているのであり、生きている以上、誰もが、多かれ少なかれ、そんな事態に日常的に巻き込まれています。すべてに満足し、快適さだけに包まれて生きている人など出会ったこともありません。

そういう意味では、私たちは、常に快適さを求めて不快を避けようとしている一方で、社会のオキテ(現実)を目の前にして引き起こされる不快に耐えながら、なんとか折り合いをつけて生きている存在だといってもいいでしょう。

ですが、そんな人間には、強い不快感から自分を守るための自己防衛メカニズムが備わっています。

たとえば、体の一部に刺激を与えることで、不快感や緊張感をやわらげているのです。特に
「歯で唇を噛む」というしぐさは、不快が強い状況で典型的に表れるとされています。

唇への刺激、それは、かつて幼児期の頃に、母親に抱きかかえられながら、指で唇をやさしくなぞってもらった感触、あるいは乳を含んだときの唇の感触の記憶であります。

★その快感は、まさに動物的なものであり、もはや記憶の奥底に眠っているかもしれませんが、それを自らの行動で蘇らせ、一時的ではあるものの、心の安らぎを見出そうとしているのです。

それは、歯で唇を噛むという行為だけに限りません。手を使って、なでる、さする、こする、つまむなど、人によってさまざまなパターンが見られます。

おそらく、それらの行為は、それぞれの幼児期のうちに身についたもので、心のバランスをとるのに役立っていたのでしょう。それが成長していく中で断片的な形で残されたというわけです。



2:同僚との会話中に唇をなめる


【状況シーン】

ある会社員は、近々、大規模なリストラが実施されると噂になっています。自分がリストラ候補になっているのではないかと心配したこの人は、人事課に籍を置いている同期の社員に「俺、大丈夫かな」と聞いたそうです。それに対し、同期の社員はしきりに
自分の唇をなめながら、「僕は何も知らない」答えたということです。

【このときの同期の社員の本心・心理】
もし、同期の社員が噂になった社員の目をまっすぐ見ながら、「大丈夫だよ」と断言してくれれば、何の心配もいらないでしょう。ですが、この同期の社員が唇をなめながら、「何も知らない」と答えたのが気になるところです。

人は、他人に対して嘘をつくとき、うしろめたい気持ちになり、罪悪感を抱くものです。さらに、その嘘がいつバレてしまうかと、恐怖心を抱くか、本人にとってはいずれも不快なことであることは言うまでまあリません。

もちろん、この会社員がリストラ候補に挙がっていたとしても、正式に発表されるまで、それを口にすることはできないでしょう。それが会社のルールであり、社会のオキテだからです。だから、同期の社員が罪悪感や恐怖心を抱く必要はまったくありません。

ですが、その一方で、一個人としては、同僚かつ同期であるこの会社員に対して真実を伝えられないことに対し、うしろめたさを感じないではいられません。それは人間として当然の感情でしょう。そんな不快を隠すために、同期の社員は唇をなめるという、自己タッチを繰り返したと考えられるのです。

当然、唇をなめるというしぐさが、単にその人のクセである可能性もあり、本当に何も知らない可能性もあります。
ですが、同期の社員が日頃は、そんなしぐさをしない人だったとしたら、この同期の社員がその会社員を騙そうとしているとまではいえないにしても、何かを隠そうとしている可能性が極めて高いことになります。
つまり、その会社員がリストラ候補に挙がっている可能性が高いということです。

★ちなみに、唇をかんだり、唇をなめたりするといった「癒しを求めるしぐさ」は、口の部分へのタッチとして出現することが多いとされています。唇へのタッチを伴う言葉は注意深く聞くべきです。


3:先輩社員に怒られて頭をかく


【状況シーン】

ある新入社員は、入社早々、遅刻を繰り返しており、見過ごすことができないため、先輩社員は、「気をつけなさい」と注意しました。それに対してその新入社員は、
頭をかきながら、「どうも、申し訳ありません」と答えたが、本気で謝ったかどうか、確信が持てない。

【このときの新入社員の本心・心理】
多くの人が、ちょっとした失敗をしたとき、頭をかきながら、「いやあ、どうも申し訳ない」と謝った経験を持っているのではないでしょうか。そのときのことを思い出してみると、確かに自分にも非があることを認めていて、「あ、いけないことをしたな」と、心のどこかで思っていたのではないでしょうか。

それに対して、自分に非がなかったときには、「いや、それにはこんな理由があって・・・・」と一生懸命、弁解したはずです。

★そして実は、この頭をかくという行為も、自分がいけないことをしたという気持ちがあるからこそ、出現するしぐさなのです。

誰でも、子供の頃に、父親や母親から、「いい子だね、可愛いね」と頭をなでられた経験を持っているはずです。そのとき、何ともいえない気持ちの良さを感じたのではないでしょうか。
もはやリアルな気持ちとしては残っていないかもしれませんが、その記憶は心の奥底に残っています。

そして、何かいけないことをしたときの不快な感情を抑えるために、自ら頭をかくことで、頭をなでられたときの快感を再現して、無意識のうちに心を癒そうとしているのです。

そういう意味では、新入社員は「いけないことをした」と認識していることは間違いないでしょう。もし、まったく反省していなければ、そうした自己タッチを伴うことなく、「はぁ、気をつけます」と空返事をしたはずですから。



4:商談中に相手が眉をこするしぐさをする


【状況シーン】

ある営業マンが、取引先の紹介で、ある企業に商談に出かけた。はじめての営業で張り切って出かけたが、話し始めてしばらくすると、相手が急に、
親指をほおのあたりに固定して、人差指と中指をくっつけて、眉のあたりをこするしぐさを見せた
さて、この場合、この営業マンのどのような行動をとるべきでしょう。

【商談相手の本心・心理】
はじめての営業での第一印象が、その後の商談の成否の大きな決め手となることはいうまでもありませんが、このケースの場合、いったん早めに切り上げたほうがいいかもしれません。

というのも、眉のあたりをこするというしぐさは、聞き手が話し手の話に疑問を感じたり、不快な心理状態になったりしているときに表れるしぐさだからです。

だいたい人の感情は、もし何も意識していなければ、そのままストレートに表情に表れるものです。ですが、私たちは、社会生活を送る上で、感情をそのまま表に出すようなことはほとんどありません。相手や状況に応じて表情を変えたり、隠したりしているものです。

そうでなければ、人間関係がギクシャクして、社会生活がスムーズに営めなくなるからです。
それでもついつい本当の気持ちが表に飛び出してくることがあります。

★特に眉間の周辺領域には本当の気持ちが現れやすいとされています。人が心の奥底で怒りを感じたり、イライラしたとき、その本心は自然に表情となって浮かび上がってきます。眉の内側は下方に下げられ、互いに引き寄せられます。

その表情の変化は明白で、すぐに相手の気持ちを察知できるはずです。

いずれにせよ、自分の気持ちがつい表情に出そうになったことに気づき、無意識のうちに指で眉のあたりをこすることで、その表情を隠そうとしたのです。

そんな状況で、いくら営業トークを重ねてみても、こちらの印象は悪くなるばかりで、マイナスにこそなれ、プラスになるはずはありません。

★空気を読めないといわれないための第一歩は、相手の表情を読むことから始まります。


5:交渉の終盤で鼻つまむ


【状況シーン】

ある新入社員が、先輩社員と営業に出かけたときのことです。値段の交渉もほぼ終了し、相手も
片手で自分の鼻をしきりとつまみながら「まぁ、いいか」と口にして契約する寸前までいった。もう契約をとれたと判断した新入社員は契約書を差し出そうとしました。そのとき、先輩社員がそれを押しとどめ、さらに契約金額の端数を切り捨てることを提案した。それはどうして?

【商談相手の本心・心理】
先輩社員は、相手を納得させ、契約書にサインをさせるにはもう一歩が必要であることを察知したのです。

★人は、何かに納得していなかったり、あるいはもう聞きたくないと感じているような場合、つい、上唇をまくりあげるように持ち上げたり、下唇をせり出したりするものです。そして、その不快感を隠すために、たとえば片手で自分の鼻をつまむなどの行動をとって、口の周辺を隠そうとするものです。

おそらく、先輩社員は、相手が「まぁ、いいか」と言いながらもしきりと鼻をつまんでいることに気づき、さらに相手が口のまわりを隠そうとしていた表情から、今ひとつ納得していないことを読みとったのでしょう。

もし、新入社員が契約書を差し出して、早急に契約を迫っていたら、相手から「やはりいったん預からせてくれ。もう少し考えてみるから」といわれる可能性が高かったのではないでしょうか。

そうなると、せっかく「契約してもいいかな」という気持ちに傾いていた相手の気持ちがいったん振り出しに戻ってしまうことになります。あるいは、ライバル他社に横取りされてしまう可能性も出てきます。そこで、先輩社員は、すかさず契約金額の端数を切り捨てるという、ダメ押しのカードを切ったのです。


6:トラブル後の話し合いで腕を組む


【状況シーン】

仕事でトラブルが生じ、話し合いの場を持つことになった。お互いの連絡ミスによるものであり、双方ともに原因があることは明らかだったが、相手はまるでこちらを威嚇するかのように、
会話のはじめから腕を組んでいる。いったいどう対処すればいいのでしょうか。

【トラブルの相手の本心・心理】
このケースの場合、相手の出方を待つのは得策ではなさそうです。まずは、自社のミスを認め、なぜ、そんなことになったかをきちんと説明することからはじめてはどうでしょうか。

★そもそも、
腕組みをして相手に対峙するということは、その人が相手に対して脅威や恐れを抱いているか、あるいは引け目があることを示しています。そして、自分からは話をせず、まず聞き手に徹しようとしているからです。

このケースの場合、お互いに連絡ミスがあったことを相手もきちんと認識していることは、そのしぐさからも明らかであり、一方的に「責任を取れ」とは迫ってこないはずです。だからこそ、トラブルをどう収拾するか、冷静に話し合いを進めていくべきなのです。

注意が必要なことは、相手が会話の途中で急に腕を組んだ場合です。

会話の途中で
急に腕を組むということは、相手がその場で交わされている話題に脅威を感じているか、相手にとって都合が悪い話題であることを示しています。聞きたくない、あるいは同意できないという気持ちが、腕を組むというしぐさとなって表れているのであり、つまり、相手が追い詰められているということです。

そのまま会話を続けて、相手を追い込むようなことになると、話はどんどんこじれていき、責任の押し付け合いとなって、問題の解決がなおさら難しくなってしまうからです。

さらに、腕組みをしていた人が急に腰に手をやり、ひじを三角形に張るしぐさをした場合は、より用心が必要となります。

★ひじを張るしぐさ(アーム・アキンボー)は、相手の心境が、それまでの逡巡から反撃に転じたことを示しています。つまり、守りから攻撃へ転じるシグナルなのです。

また、会話の途中で急に目線を遠くにやったり、下を向いたりするのも、アーム・アキンボー同様気持ちの大きな変化を示していることがあります。
そんなときには、ただちに話題の中身をチェックして、いったん話の流れを変えるなどの心配りが必要です。



7:仕事のやり直しを命じられて、口角を下げる


【状況シーン】

上司のもとに、ある部下があごを持ち上げるようにして、企画提案書を持ってきました。ですが、今ひとつポイントがつかめないので、「もう少し、論点を整理して」といったところ、「はい」と返事はしたものの、
口角を下げた表情を見せていた。この部下の心情はどうなっているのでしょう。

【部下の本心・心理】
★部下が企画提案書を提出したときの、あごを持ち上げ、前方に突き出している姿勢は、かなりの自信を持っていることを示しています。


また、実際にそんな姿勢をとってみるとわかりますが、視線は相手を見下ろすような形になります。まさにその通りで、心の中で、相手をみくびったり、見下したりしているときにも表れるしぐさです。

自信を持っていたところに、「もう少し、論点を整理して」といわれたことに対して、かなり反発しているに違いありません。それが、口角を下げるという表情になって示されたのです。

★この口角を下げるという表情は、優越感を強く誇示しようとする気持ちを持ったときに表れます。

自分の企画提案書を上司に否定されたと感じ、一瞬、強い怒りや不満に心を支配されたと思ったことでしょう。

部下は上司に書き直しを命じられた悔しさを癒し、自分の心のバランスをとるために、優越感を誇示する表情を浮かべたということです。

おそらく、部下は、そんなことを意識したことも、表情が出たことも意識していないはずです。
しかし、見方によっては、そうした反発心は大変貴重なものであります。新しい動きを生む原動力になり得るからです。

部下の本音を知った上で指導していく、それが上司の大きな役割なのです。


8:休日出勤を打診されて、視線を動かす


【状況シーン】

三連休の中日に新製品発表のイベントを開催することとなり、そこで上司は部下の三人の女性を呼んで、「誰か、休日出勤してくれないか」と打診しました。すると、三人とも「はい」と答えましたが、返事をする直前の目の動きは三者三様でした。A子は黒目を左右に動かした。B子は黒目を斜め左下へと動きました。そしてC子は真下に黒目を動かしました。それぞれの部下の本心はどうなんでしょうか。

【部下の本心・心理】
せっかくの休みに仕事を入れるのは、できれば避けたいと思うのが人情です。上司も頼みづらいものです。

そこで、三人を呼んで「誰か、休日出勤してくれないか」と、自主的な判断を求めたのでしょうが、それに対する返事がいずれも「はい」というものだったというわけです。
では、誰に頼むのがいちばんいいのでしょうか。

「目は口ほどにモノをいう」よくいわれますが、確かに人の本心は目の動きに表れやすいものです。

★その目の動きから判断すると、「出たくない」と強く思っているのは、A子です。
黒目が左右方向に真横に動くのは、拒否・拒絶サインだからです。連休を利用して旅行でもしよう、という計画があるのかもしれません。

★一方、B子のように
黒目が左下に動くのは、感情的に受け入れられず、困惑しているサインです。
具体的なスケジュールがあるわけではありませんが、「せっかくの休みを奪われるのはイヤだなあ」と思っています。

★そして最も休日出勤を頼みやすいのがC子です。
黒目が下へ動くのは、罪悪感や服従を示すサインだからであり、このケースの場合、C子は「仕事だもん。しかたないな」と素直に受け止めていると考えられるからです。

ただし、このように本心が目の動きに表れるのは、「はい」と返事する直前、しかも一瞬のことで、本人も意識していないことがほとんどでしょう。
この三人のうち、誰に頼むかは、結局、上司の判断しだいです。


9:「うまくいっているか?」と聞かれて、唇を左右に広げる


【状況シーン】

偶然、会社のエレベーターで一緒になった上司が、新しく配属になったばかりの部下に聞いた。「君、例の案件はうまくいっているかね」。それに対し、部下は「はい、もちろん順調です」と答えて、
唇を左右に広げるしぐさを見せた。

【部下の本心・心理】
このケースの場合、上司は部下の「順調です」という返事は鵜呑みにしないほうがいいかもいれません。部下が口角を上げて笑って見せれば、言葉通り順調に進んでいると見てもいいでしょうが、部下は唇を左右に広げているというしぐさを見せています。それが、鵜呑みにしないほうがいいという根拠です。

★人が唇を左右に広げるしぐさ、それも唇が離れた状態で左右に広げ、さらに下唇に張りがあるようなときには、恐怖、不安、心配などを感じていることが多いです。つまり、仕事がうまく進行していない可能性が高いのです。

ここで上司は「ほんとかね。気になるところはないのかね」と重ねて聞くべきです。そうすれば、部下も「いや実は・・・」と、自分が心配していることを口にするきっかけをつかめるからです。

企業においてはよくありますが、やる気があったり責任感が強かったりする者ほど、仕事を任された場合、多少の問題があっても「仕事は順調だ」といい、何とか自分だけで処理・解決しようとしがちです。しかし、それが時として大きなトラブルを引き起こす原因となりかねません。

それだけに、上司としては、部下に対する気配りやコミュニケーションが大切になるわけですが、その際、部下の言葉だけではなく、その表情やしぐさを読むことも必要になります。


10:「理由」を聞かれて、上唇と下唇を巻き込む


【状況シーン】

課内の女性が急に早退したので、上司が仲のいいA子に聞いた。「いったいどうしたんだ。風邪でも引いたのかな?」。それに対してA子は、「よくわかりませんが、きっとそうだと思います」と答えて、
上唇と下唇を巻き込むしぐさを見せた

【A子の本心・心理】
A子の「よくわかりません」という曖昧な返事と、その後に見せたしぐさから考えると、早退した理由を詳しく知っている可能性は高いでしょう。

★上唇と下唇を巻き込むしぐさは、感情を抑え、何かを隠そうとしているときに見られるしぐさだからです。

早退した子は、ひょっとしたら自分の大好きなアイドルスターの公演を見に行ったのかも知れないし、あるいは、彼とデートするために早退したのかもしれません。いずれにせよ、説明しづらい理由だったのでしょう。

そして、仲のいいその子には、その理由を話していたのではないでしょうか。

だから、「風邪でも引いたのかな?」という上司の言葉に「きっとそうだと思います」と飛びついたのです。

もちろん、社員同士でかばい合うことは珍しいことではありません。また、そうした仲間意識が必要な場合もあるのだから、よほどのことがない限り、上司がそれを厳しく追求する必要はないでしょう。「何か言いにくい理由があったんだろうな」と胸に収めておくほうがいいでしょう。


11:新商品の売込み中に、足先を出口に向ける


【状況シーン】

二人の女性が売り込みに行った。相手の女性バイヤーはとても愛想がよくて、話を熱心に聴いてくれた。ですが、気になったのは女性バイヤーの足の向きです。顔と上半身は、並んで座っているふたりの女性のほうを向いているのに、
足先は出口のほうを向いていたのです。

【女性バイヤーの本心・心理】
帰りの電車の中で、ひとりの女性が「ちょっと望み薄かなあ・・・」とつぶやいたそうですが、おそらく間違っていないでしょう。

★人間は、本当に興味を持ったら、前傾姿勢(フォワード・ポスチャー)をとって、身を乗り出すものです。それに対し、興味を失うと体を後ろにのけぞらせる後傾姿勢(バックワード・ポスチャー)になります。

もちろん、ひと目でわかるほどの後傾姿勢をとるわけではありません。ごく一瞬の小さな肩の動きなので、それを察知するのはなかなか難しいでしょう。それよりわかりやすいのが体の向き、それも下半身がどちらを向いているかです。

ふたりの女性の相手をしてくれた女性バイヤーの足先が出口のほうを向いていたのは、内心では話の内容に興味を失っているからです。愛想よく、熱心に話を聞いているポーズをとってはいるものの、「できれば話を切り上げて、次の仕事に移りたい」と思っているのです。

さらに、
目の前のシャープペンやおしぼり、携帯などをやたらといじるしぐさを見せるときには、飽きてきている証拠で、耳を触るのは、もう話を聞きたくないという気持ちの表れです。

そんな相手といくら会話を続けても、マイナスにこそなれ、プラスになることはあり得ません。無理をすればするほど、相手に悪印象を与え、次のチャンスを失うことになります。ここはいったん引き上げて、改めて出直すべきです。


12:クレーム対応で、カバンを机の上に置く


【状況シーン】

ある会社員が、取引先からのクレームに対応することになった。相手の会社まで出かけ、担当者と向かい合わせに座ることになったが、資料を入れた
カバンを机の上に置き、相手との会話の最中、ずっとあごを引いて身を縮こまらせています。

【会社員の本心・心理】
その会社員が自分と取引先の担当者の間にカバンを置いたのは、自分を守ろうとする防衛本能に従った結果といえるでしょう。机の上に置かれたカバンは防御壁がわりのシンボルです。

誰でもクレーム処理などしたいとは思いません。相手からイヤなことを言われたり、厳しく責められたりする可能性が高いです。それがわかっているから、その会社員の心の中に、相手と距離を置きたいという思いがあり、その思いが、机の上にカバンを置くという行動をとらせたのです。

★つまり、相手との間の空間にモノを置くというのは、相手を拒絶することを象徴するしぐさなのです。

だいたい、その会社員は自分の会社を出てその会社に向かう道では、足取りがひどく重かったはずです。
人間は、自分が率先してやりたいことがあったり、会いたい人のところに行くときには、足取りも軽く、速度もあがるものです。

しかし、行きたくないところへ行くとなると、トボトボとしか足も進みません。まして、相手の会社に着いて、会議室に案内されるときには、まさに処刑台に向かうような気分だったに違いありません。

そして、
会話の最中にとっていたあごを引くという姿勢も、典型的な防御の姿勢です。何かの脅威にさらされると、多くの動物が体全体を丸めて敵から身を守ろうとしますが、それと同じ心理があごを引くというしぐさを生み出しているからです。


13:謝罪の場面で、貧乏ゆすりをする


【状況シーン】

ある営業マンはクライアントの注文を受け、製造会社に発注していたが、その会社の手違いで約束した日までに納品されなかった。クライアントから激しいクレームをつけられ、対処に終われる中、製造会社の担当者が謝罪にきたが、その
担当者がしきりと貧乏ゆすりをしていることに気づいた。

【謝罪にきた担当者の本心・心理】
★貧乏ゆすりは、一種のストレス回避行動
です。たとえば、長く待たされたり、仕事がうまくいかない場合、あるいは不安や心配なことがあってプレッシャーがかかるような場面に表れるしぐさで、無意識のうちにフラストレーションを解消しようとしているのです。

謝罪のために会社にやってきた製造会社の担当者が激しいストレスに襲われていることは間違いありません。

同様にストレス回避行動としては、爪を噛んだり、机を指でトントンたたくなどのしぐさも挙げられますが、
貧乏ゆすりは、相手に見えにくい下半身の動きだけに、本人も知らぬ間に本心をさらけ出すしぐさとして、典型的に表れます。

逆にいうと、
このようなしぐさはすべて、交渉の場、ましてクレーム処理といった困難を伴う場では決して見せてはいけないものです。

ビジネスシーンにおいて、相手の本音を知ることが何より求められることは言うまでもありません。

交渉を有利に進めるにも、好条件を引き出すにも、そして騙されないためにも、相手のしぐさを読み、心の動きをつかんだうえで、相手の一歩先を行くべきなのです。





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