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★人間の感情には、自分で意識しコントロールできる「表層心理」と、本能に根ざし自分ではコントロールできない「深層心理」があるとされています。 精神分析の祖とされるオーストリアの精神分析学者フロイトが主張した「無意識」(心の中の意識でない領域)の発見です。 「人間の心には、表層心理と、その下に深い深層心理が存在している。そして、深い層では無意識なプロセスが進行しており、日常生活の心理に対して大きな影響を及ぼしている」というのです。 それを発展させて「深層心理学」という概念を最初に提唱したのは、スイスの精神科医ブロイラーでした。 彼は、当初は異端者扱いされていたフロイトを支持し、フロイトのもとに自分の弟子であるユングを送り込みました。 そのユングは後に「夢判断」などで知られるようになりますが、さらに「無意識」には「個人的無意識」以外により深い層での無意識の領域としての「集合的無意識」が存在するとし、集合的無意識は人類の進化の過程で蓄積され、発展し、構成されてきたものだとしました。 そして、その研究は多くの研究者に受け継がれています。 それにしても、いったいなぜ、ノンバーバル・コミュニケーションの研究が絶えることなく続けられているのでしょうか。 ★それは、調べれば調べるほど、人は深層心理に支配されており、人がよりよいコミュニケーションを維持していくためには、無意識下で発せられるノンバーバル・コミュニケーションを知ることが重要であると認識されてきたからです。 私たちのコミュニケーションの中で大きな比重を占めていると感じている言語(音声的チャンネル)は、どちらかといえば表層心理に支配されていますが、その能力は子供が大人に成長していく中で身に着けていくものです。 たとえば、赤ちゃんは言葉なんてまったく理解できません。お腹がすいたり、具合が悪いときには、泣き声をあげたり、顔をクシャクシャにして親の注意を引こうとします。また、お母さんが笑いかけたり、やさとく触れたりすることに対して、喜びの表情やしぐさを見せたりします。 そうした表情やしぐさは、「無意識」のうちに深層心理から発せられるものです。 つまり、赤ちゃんは、100%ノンバーバル・コミュニケーションの世界で生きているわけです。
100%ノンバーバル・コミュニケーションの世界で生きている赤ちゃんも、成長するに従って変わっていきます。少しずつ言葉を覚えるとともに、記号あるいは文章などによって表現される抽象的な概念を駆使できるようになります。 それとともに、表現やしぐさによるノンバーバル・コミュニケーションはいつしか影を潜め、中学生ともなれば言葉によるコミュニケーションが幅をきかせるようになっていきます。表層心理(自分で意識し、コントロールできる心理)が前面に出てくるわけです。 ですが、皮肉なことに、言葉によるコミュニケーションが幅をきかせるようになるにつれて、不都合なことが起きるようになります。それだけに頼っていると感情のすれ違いが起きて、快適な社会生活を営めなくなってしまうことがあるのです。 たとえば、幼い子供同士を見ていると、「好き」「嫌い」という言葉を感情のおもむくままに発しています。それはまさに、言葉通りに受け取ってもいいでしょう。 その結果、二人の仲が多少悪くなることはあるかもしれませんが、それほど大きな問題となることはありません。少なくとも誤解のないコミュニケーションが行われるからです。(互いに嫌いなら付き合わなければいいだけの話です) しかし、成長して社会に出るとそうはいかなくなります。たとえイヤな相手でも仕事のためには付き合わなければならないことも多いです。さらに、大人になり知恵がつくと、お互いの本心を隠す欺瞞のテクニックも上達し、おべっかなども駆使できるようになります。 その結果、人間関係が複雑になり、ややこしい問題が生じることがあります。たとえば、日頃の会話で自分に好意を抱いていると思い込んでいた人が実は自分のことを嫌っていたり、逆に自分が信頼している人がそれほど自分のことを評価しておらず、いざというときに手ひどく裏切られるようなことが起きたりすることもあります。 ★正しく相手の本心を見抜いていなければ、痛い思いをしたり、窮地に立たされたりすることが少なくありません。自己防衛のためにも、ノンバーバル・コミュニケーションを学ばなければならないのです。 私たちは、コミュニケーションは言語が支配しているように感じてしまいがちです。ですが実は、メラビアンが、「人は、言語より、聴覚情報、視覚情報といったノンバーバル・コミュニケーションのほうに支配されている」と指摘しているように、実際の人間関係においては、ノンバーバル・コミュニケーションのほうがよほど大きな役割を果たしているということを知っておくべきです。
人は笑顔が大好きです。どんな人でもニコニコ笑っている赤ちゃんの顔を見ると、つい微笑ましい気持ちになるはずです。赤ちゃんの笑い顔を見て不快な気持ちになるという人はよほどの変人か、あぶない人でしょう。 また、愛し合っている男女が一緒にいると自然に笑みがこぼれてきます。恐ろしい形相で愛をささやき合うカップルなど見たことがありません。それこそ、とろけるような笑顔を浮かべているのが常のはずです。 ★なぜ、人々は笑顔に惹きつけられるのでしょうか。 それは、笑顔は人間が生まれつき持っている「種の保存の本能」を刺激するからだといわれています。 そもそも人間に限らず、動物の赤ちゃんは、小さく、やわらかく、そして大きな目をしているなどの共通事項を持っており、そうした外見が「保護したい」という感情を掻き立てる一つの理由になっています。 さらに人間の赤ちゃんの場合、誕生して6週間ほど経つと、親の顔や声を認識して笑いかけるようになり、その後、成長するにつれ、満腹になったり、体を触られたりするとニコニコするようになっていきます。それを見ると、顔ばかりではなく、他人ですらその子に手を差し伸べたくなるものです。 赤ちゃんにとって、笑顔はまさに自分を保護してもらうための「武器」であり、大人はそれを前にすると矢も盾もたまらなくなってしまい、赤ちゃんに心のこもった世話をしてしまいます。そうして種が保存されていく、というわけです。 実際、私たちが生活するうえで、笑顔は欠かせないものです。たとえば、見ず知らずの人々が集まった場では、人々はまるで磁石で引き付けられるように、にこやかな表情をしている人の周りに集まる傾向があります。 誰も好きこのんで、無愛想な顔をしている人や、偉そうな顔をしている人のそばに近寄っていく人はいないでしょう。 それは、笑顔が連帯や愛をイメージさせるものであると同時に、接近を受容します。温かく人を受け入れる「受容のシグナル」になっているからです。 実際、ステキな笑顔の人は、穏やかで誠実だと見られ、社会的に成功する人が多いともいわれています。 ★何が言いたいかというと、このように、「表情」は生きるうえで大きな役割を果たしているわけですが、それはもちろん笑いの表情に限ったことではない、ということです。 つまり、さまざまな表情には、そこに隠されたシグナルがあるということです。
「軽蔑」は、「嫌悪」に非常に近い感情で、まさに親類関係にあるといってもいいでしょうが、いくつかの点で違いがあります。 ★いちばん大きな違いは、嫌悪の感情が、味や臭い、感触などからも生じるのに対し、軽蔑の感情の対象は人間、または人間の行為にかぎられるということです。 当たり前の話ですが、腐った肉の臭いをかいだとき、人はその臭いに嫌悪感を抱きますが、肉を軽蔑する人はいないでしょう。軽蔑の対象となるのは、あくまでも人として許しがたい行為や、その実行者です。 このような軽蔑の表情をされるのは、多くの人が最も避けたいものだといえます。よく「人間、軽蔑されたら終わりだ」という人もいますが、軽蔑されるということは、まさに「人間としての存在価値がゼロだ」とレッテルを貼られるようなもので、非常に屈辱的なことだからです。 軽蔑の表情は、 @ 口角の一方が耳の方向に広げられ、強く締められる。そのとき、顔がやや横向きになることが多いです。 A 口角が締められた側の鼻の穴が広げられる。 もし、あなたが誰かにこんな表情をしたり、されたりしているなら、その関係はギクシャクしたものでしょう。仕事であれば、何かトラブルの原因になってしまいかねません。 注意が必要です。
★人の心は、表情以上に「体の動き」が大切です。つまり、「しぐさ」となって表出されることが多いです。 それは、表情については多くの人がある程度の訓練を受けていて、本心を隠すテクニックを身に着けているのに対し、しぐさについては訓練する機会が少なく、本心がストレートに表れてしまうことが多いからです。 「えっ、私は表情を隠す訓練なんて受けたことない」という人もいるでしょう。ですが、誰でも、子供の頃、怒った表情をしたり、すねた顔を見せたりしたとき、母親から、「そんな顔をしたら可愛くないわよ。いい顔をしなさい」などと注意された記憶があるはずです。 人間は、子供の頃からそう教えられているうちに、表情を隠すことを身に着けていくといわれています。そして成長して、生きる社会が広がっていく中で、周囲の人や環境にもまれながら、段階的にそのテクニックに磨きをかけていきます。 ★ですから、大人になると、「顔で笑って心で泣く」「笑ってごまかす」などということもできるようになるのです。 もちろん、いくら訓練したからといっても、自分の本心を100%、隠せるわけではありません。人の感情は無意識のうちに表情に表れるので、ポイントさえつかめば、表情だけでもかなり正確に相手の本心を読み取ることができるはずです。 ですが、ほとんどの人は、意識するしないを問わず、自分にとって都合の悪い表情を、一瞬にして隠す技術を多かれ少なかれ身につけています。 もし、それを見極めようとするなら、それこそ相手の顔をジッと凝視しているしかありません。そんなことをすれば、「なんだ?こいつは俺の顔をジロジロ見ていて気持ち悪いな」などと思われるのが関の山でしょう。 ★そこで身に着けたいのが、「表情」からだけではなく、「しぐさ」からも相手の本心を読み取るテクニックです。 表情は見てすぐわかるものだからこそ周囲の人も注意するし、自分自身でも「あぁ、いけない」と気づくものです。ですが、しぐさはそうはいきません。首から下の動きはなかなか気づかれないものだし、見逃されてしまいがちです。 たとえば、イライラしたときに貧乏ゆすりをする人は多い。よほどひどければ、「やめなさい」と注意されるでしょうが、机の下で小刻みに貧乏ゆすりをしているくらいなら、気づかれず、注意されることもないはずです。 そのため、多くの人はなかなかしぐさを隠すテクニックを身に着ける機会を得られないまま成長していきます。 また、状況によって表れるしぐさも人によってさまざまで、「無くて七癖」というように、無意識のうちに、さまざまなしぐさをしています。 だからこそ、その見るべきポイントをつかめば、相手のしぐさから本心を読み取ることができるし、そうすることで相手にうまく対処できるようになっていく、というわけです。 |
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