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私たちの舌は、食べる、味わう、話すという、生きていくために必要な役割を担っている一方、人にメッセージを与えるという役目も持っています。ひとつは拒絶を表わすメッセージで、もうひとつは欲望を表わすメッセージです。
生まれて間もない乳児を身近で見たことがある人であればご存知でしょうが、母乳やミルクで満腹になったときに、乳首を拒むかのように舌を固くして突き出します。このときの気持ちを言葉にすれば、「もう十分だから、近づけないで」というところでしょう。なかには「見るのもイヤだ。あっちに行け」という意思表示をしている過敏な乳児もいるかもしれません。 乳児に限らず、口の中に嫌いなものが入ったときにそれを出すのは舌の役目です。これが、心理的に嫌いなものを出す、つまり、拒否するときにも使われるのです。 よく、子供たちが対立した相手に対して、下まぶたを指で引っ下げて赤い部分を見せて「あかんべぇ」をするときに舌を出すのも同様です。 「こっちにくるな、おまえなんか嫌いだ」と言葉に出したいけれど、出す勇気もきっかけもないときに使う技です。 しかし、この動作は、何も子供だけにみられるというわけではありません。招かざる客を撃退したいときに思わずとってしまう動作です。 ひとり静かに音楽を聴いているときに来訪者を知らせるベルが鳴ったときなど、おそらく、反射的に舌打ちをしてしまうか、舌を突き出してしまうでしょう。 締め切り間近の仕事に集中し、このままのテンションを保って進めばもうすぐ完成するというときに、「これも追加です」と新たな書類を差し出されたとします。できればその書類を投げ捨てたいが、そうもいかないので、その代わりに「まいったなぁ」と心の中で重い、無意識に舌を出しているものです。 苦手な人、話も相性も会わない人、そばにいてほしくない人に対しては、満腹になった乳児が乳房を阻むように、舌が拒絶の反応を見せることがあるのです。この場合、舌に力が入り、固くなっているのが特徴です。
一方、欲望を表わすメッセージの場合には、舌には力が入っておらず、ゆっくりとした動きを見せます。それは、お腹をすかせた乳児が乳房を求めるごとくです。 最も特徴的なのが、したなめずりのような、狙いを定めた獲物に食いつこうとするかのように、直情的で動物的な印象を与える動きです。 舌なめずりほどあからさまではありませんが、ゲットしたい異性を見つけたときに、思わずぺろりと舌を出すことがあります。 これは、舌を使って口の中に好きなものを入れる動作の表れで、性的に相性がいいと判断したサインです。 相手の目的がはっきりしているので、サインを送られた側は、是か非か、どちらにしても答えが出しやすいでしょう。 固く突き出された舌は拒絶サイン。滑らかな動きのある舌は欲望のサイン。見た目にも非常にわかりやすいです。
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