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年をとってくると、多くの人は昔話を好むようになるものです。 水を向けられると、「あの商品の開発は、徹夜つづきで大変だった」「そういえば、あのとき食べたカニはうまかった」などと、楽しげに過去を語ります。なかには、聞かれてもしないのに、「あのころのオレは」と自分の過去を得意げに話して、周囲を辟易させる人もいます。
ところが、いくら水を向けても、過去を話そうとしない人もいます。 いろいろな経験がありそうなのに、そんな話は一つもしないのです。「その時代の話を聞かせてください」などと頼んでも、「忘れてしまった」のひと言で終わってしまうのです。 そういう人は、過去ではなく、現在や未来に目を向けているタイプに見える場合もありますが、なかには、過去に相当つらい体験をしてきたような人も含まれています。 つらい体験を忘れたことにしないと、生きていけないタイプといってもいいでしょう。 実は、人間は、何を記憶すべきかを無意識に選別しています。 楽しい経験は、なるべく覚えておこうとするいっぽう、極端につらい経験は忘れてしまおうとします。経験したときの恐怖や苦しみの度合いが強いほど、忘却の傾向が強くなります。
それは、人間が精神を安定させるための防衛機能といえます。 極度につらい体験、悲劇をいつまでもありありと覚えていると、その恐怖や悲痛感がよみがえるばかりで、人は何もできなくなってしまいます。そこで、極度につらい体験は、記憶から消える、つまりは忘れてしまうようにできているのです。 たとえば、事業に失敗、借金に何年も苦しんでいた人には、本当にその貧窮時代の話を忘れていることがあります。あるいは、恋人にふられて自殺未遂騒動まで起こした人間が、そのことをほとんど忘れてしまっているケースがあります。それらは、人間が自分を守るための積極的な忘却なのです。 ボケてもいないのに、「過去の話を忘れてしまった」という人には、実際によく覚えていないことが少なくないようです。 徹夜つづきでつらかった話や試験で0点をとったといった類の話は、まだ笑い話になりますが、彼らは、そのレベルではありません。とんでもないが軽々しく人に話せるような内容ではないつらい体験をしてきた可能性があるのです。
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